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「地図と拳」(小川哲)を読んで

読書の感想です。
*極力ネタバレしない範囲で、個人的感想や感じたことを書いていきます。

やけやま不動産、代表の甲斐です。

地図と拳」(柴田哲孝)を読みました。

感想

久しぶりに長い小説を読みました。

都市計画や建築、地図制作、暴力など身近なものからそうでないものまで、旧満州を舞台に50年以上の移り変わりがSFとして書かれています。

一口に「地図と拳」とは言っても、そのタイトルからは想像できない歴史と虚構が散りばめられ、読了後には一つの都市の成立と終焉を見届けたような感覚でした。

明男は、「建築とは時間」だと言い、同じ場所に、同じ形の建築が存在することで、人間は過去と現在が同一の世界であることを実感し、つまり建築は、人間の過去を担保するのだと言いました。

私は、その視点で言えば、建築に限らず、むしろこの世に存在する全てのものは同じなのだと思いました。

つまり無名の者であっても、その者を知る友人や知人や家族は、その者の存在によって自らの存在を実感し、時間を認識するのだとすれば、建築も人も同じだと思いました。

何かしらの組織に所属していれば、何かの仕事が与えられ、それぞれの専門性が生まれていくのだと思いますが、個人の専門性が高まるほど、視野が狭まることは避けられないかもしれません。

そうでなければ専門性の深みは増さないという気がする一方で、深い専門性からむしろ視野を広げるということもできるのではないかという可能性を感じさせられました。

時の流れと人物の移り変わり、さまざまな出来事と細川の知略を、読み進めるうちに深く知り、長編で登場人物も多いのですが、最後までついていくことができてよかったです。

夏の暑い時期に、エアコンの下で読み進めるには最高の小説でした。


やけやま不動産では、不動産に関すること、地域のこと、代表の日々のことについてブログ発信も行なっていますので、ご興味ありましたら、是非ご一読ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。