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「熟柿」(佐藤正午)を読んで

読書の感想です。
*極力ネタバレしない範囲で、個人的感想や感じたことを書いていきます。

やけやま不動産、代表の甲斐です。

熟柿」(佐藤正午)を読みました。

感想

小説の醍醐味は心理描写にあると思っています。

本作が、もし映画化されたとしたら、登場人物の内面が十分に表現しきれず、どこか味気ない作品になってしまうのではないかと想像しました。

「熟柿」という言葉には、「熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時機が来るのを待つこと」という意味があるそうですが、その感覚は私自身の経験とも重なりました。

子育てでも仕事でも、早く物事を前へ進めたいという気持ちはありながら、焦ってもどうにもならないことがあります。いずれその時が来ると信じて待つしかない場面があり、それが「熟柿」という言葉の表す世界なのだと感じました。

かおりの罪は決して許されるものではありませんが、償いという観点で考えると、法的な刑罰を受けた後の苦悩や、その罪とどう向き合うかは人それぞれなのだと思いました。

刑務所を出所すれば一区切りと考える人もいるとは思いますが、かおりの場合は、子どもと引き離され、写真を見ることすら許されない日々が長く続き、その時間そのものが罰であるように感じました。

一方で、かおりは事件そのものへの償いの意識は決して強くはなく、物語を通して募らせていくのは、ひたすら子どもに会いたいという思いです。

そのかおりの気持ちと、元夫や久住呂の考えとの間には大きな隔たりがあり、そのギャップがあるからこそ、かおりの願いを実現するには長い時間が必要だったと納得し、その一連の描写には納得させられました。

長い間何も進展せず、焦りやもどかしさを抱える気持ちはよく理解できます。

しかし、然るべき時が訪れると、それまで止まっていた物事が一気に動き出し、むしろ止めることのほうが難しくなることもあります。

かおりが息子と再会するまでに費やした時間、そしてその先の人生を思うと、「人生は長い」ということを改めて考えさせられました。

そして、かおりがいつの日か、あの事件さえも自分の人生にとって必然だったと受け入れられたとき、初めて土居との未来も本当の意味で開けていくのではないかと思いました。


やけやま不動産では、不動産に関すること、地域のこと、代表の日々のことについてブログ発信も行なっていますので、ご興味ありましたら、是非ご一読ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。